2010年1月4日月曜日

地球と生命/その進化  その3

<地球と生命/その進化>    荒木泰治

3) 生命の誕生

生命とは何であり、どのようにして生まれたのであろうか?
生命の特徴は①外界から独立した空間を持ち、②代謝機能と、③自己複製機能を持つことである。代謝とは物質とエネルギーを取り込み、タンパク質を使って体を作り、エネルギーを出すこと。自己複製とは二種類の核酸(DNAとRNA)にある情報を使って同じタンパク質(子孫)を創ることである。タンパク質と核酸の分子は細胞という袋の中に入っていて生命に不可欠な分子である。

こういう生命を創りだす物質は有機物であり、無機物と区別される。その中でも重要なものはアミノ酸である。アミノ酸はメタンとアンモニアから還元性雰囲気で創られ易く、安定である。原始地球の大気は主として、二酸化炭素、一酸化炭素、水、窒素であったが、これに高エネルギー陽子(宇宙線)があたれば、アミノ酸{注4}を生成できる。

一方、前述のマーチソン隕石の分析から、そこにL体が多いアミノ酸が検出され、宇宙でできた隕石中のアミノ酸も生命創生の重要な役割を果たしていると考えられる。こうした有機物を溶解した原始地球の海(原始スープ)には水素、メタン、硫化水素、など還元ガスを含み、これに鉄、亜鉛、マンガンの触媒作用と、海底熱水噴出孔(1979年、海底深くに300℃の海水噴出孔を発見した)の熱エネルギーも加わって、化学進化が進み、タンパク質や核酸が生成、そして生命が誕生した。このように、生命誕生には多くの要素が絡み合ってはいるが、その中でも水の媒介と熱水の存在が不可欠な条件であったことは特筆すべきである。

また、生命第3の機能である自己複製機能としての遺伝子(核酸)に、現存する全ての生物が共通の要素を有していることも注目される。このことは全ての生命が一つのオリジンに基づいていることを物語っている。即ち、何億分の一の確率でしか起こらない化学反応が或る条件の下で起こり、その後、際限なく複製が行われ、そして、進化・分岐を繰り返ししていったものと考えられる。
生命の誕生時期については確証が得られていないが、地球表面層が安定した約40億年前と考えられている。世界最古の生命情報はグリーンランドで発見された38億年前の堆積岩(チャート)の岩石中の炭素の同位体比から、その炭素が生物起源の炭素と判定されたこと(化学化石)である。実物化石としては世界最古の生命化石が1983年、西オーストラリア・ノースポールのビルバラ地域にある35億年前の堆積岩で発見されている。

ここは太古代の深海にあたり、熱水活動の活発な場所であったとされ、その化石はそこに生息していたと考えられるフィラメント状バクテリア(一個の長さ0.1m程度)であった。これ以外にも有名な化石として南アフリカ東トランスバール地方の32億年前のチャートに発見された同様の微化石があり、そこには単細胞原核生物の特徴としての細胞分裂による自己複製の跡が残されている。

{注4}:アミノ酸はその分子結合の方向から左手型(L体)と右手型(D体)があり、実験室的には各同量が生成する。しかし、地球生物のタンパク質ではL体のみである。

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